自分 | 木のうろ

自分

水曜日に、週末に、終電で二つ上の彼女が部屋に来た。
部屋に来て酒を飲んで眠った。
部屋に人が来るのは楽しい。一人の時間を多忙に過ごせるようになったけれど、特に週末は酒と薬に頼っている。
そういう時に、誰でもいいから側に人がいてくれるのは心が安まる。その彼女は雑誌を読みながら寝ころび、自分はPCに向かって曲を作ったりして時間を過ごした。
トマトソースが上手にできたスパゲティをおいしいと平らげ、その後布団で抱き合って、体温を求めあって、身体を触りあった。セックスはしなかった。性器は固くなったけれど、2ヶ月間射精はしておらず、そのときも身体を触って、人の温度を感じているうちに眠った。目が覚めると相手は起きていて、こちらの髪を撫でていた。

ホワイトデーには、お返しに自分が作った曲が欲しいというのでCDに焼いて渡した。メールが届き、とても感動した、こういう感動が味わえて、辛い立場同士の出会いだったけれど貴方と会うことができたのは幸せだと書いてあった。

部屋を訪れてくれればくれるほど親密さは増す。
それは恋情かというのなら、やはり恋情ではない。
ただ、ありがたいと思う気持ちだ。

仕事は本格的に忙しい。その忙しさには不本意も含まれているが異動はこの季節の常だ。

年末の別れから周囲が急激に変化している。
明日はまた通院の日だ。処方を変えてもらう。
これからの仕事は人と接することが多くなる。
編集部ではなくなる。自分は人と接するスキルが低いくせに人に依存しないと駄目になる人間だ。薬の力に頼ってでもその駄目さ加減を修正する。

前の彼女のことを考える水位は減っているがなくなってはいない。
ただ、二ヶ月前の自分にはもう戻れないし、戻りたいとは思えなくなっている。

前身か変化なのかは分からない。陳腐な言い方だが、変わらないものなど何もないということを身を切るように実感しながら生きている。