木のうろ -4ページ目
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薬 編集 | 削除

仕事帰りに精神科で薬をもらう。
睡眠薬とセロトニン誘発剤パキシルとかいうのと、即効性のある思考を鈍麻させる薬。
先生にカルテを書いてもらい話をしているうちにどんどんどんどん泣けてくる。これから会社に戻るのに涙がとまらない。
なんでこんなことになったんだろ。

あなたの脳は、今外部ストレスを処理しようと最大限に働きすぎてるんです。
腕を曲げるときだって、表の筋肉と裏の筋肉が両方つっぱったままだったら腕は曲がらない。順序だてて物を考え解決に向けて考えるために、脳を休める必要だってあるんです。あなたの場合、酒より薬のほうが適切です。
そう言われた。

会社に戻り一錠飲んだ。10分くらいで効き始め、それから90分くらいが一番効果があるそうだ。
飲んでみたら確かに効く。ドローンな状態だ。

今朝回った失恋サイトには多くの人間の書き込みがあり、
どうにもならない辛さはなりふり構わず何にでもすがったほうがいいと書いてあった。俺には仕事がある。眠れず飯も食えず体をこわして職場をクビになるわけには行かない。薬で落ち着くなら薬を利用しようと思う。

はじめて2



友達になりましょう。それで、あなたがまだ私を好きで会うのが辛いなら、
これきり会わないようにしようと彼女はいった。

八年一緒に過ごして、そんなに急に切り替えられるのか?君は俺がいなくなって寂しくないのか?と聞くと、寂しいし辛いと思うが慣れなければいけないと思うと言う。慣れられるのか?と聞くと。慣れられると言った。

彼女はもともと考えの途中経過を話すことはなく、本人もそれを語るのが難しいと言っていて、いつも結果しか言わなかった。その結果はいつも正論だった。自分は途中経過ばかりを冗長にしゃべって、結果はいつも誤りだった。

俺も十日間考えて、まず君と別れることなんてできない、君と結婚したい、ずと一緒にいたいと思っていると言った。
それならばなおさらつきあえないという返答だった。

彼女はつきあい始めから、わたしは結婚はしないし子供も生まないと言っていた。自分も結婚願望は薄かったからちょうどいいくらいに考えていた。
けれどとにかく彼女を失いたくなかった。結婚しようと言った言葉は、詭弁ではない。けれどこれを書いている今思い返して、すがりの言葉だったように思える。

彼女が慣れる、と言い切った以上、これは本当なんだと思った。
それでも受け入れられるわけもなくて、とりあえず考えさせてくれと茶を濁した。彼女の手を握ると彼女が体を固くした。世の中こんなに辛くて切なくてどうしようもない瞬間があるのかと思った。
頭を抱いたけれど、体は固くなるばかりでただ直立不動するだけで、
こういう事されても、もう良くも悪くも何ともないんだよと言った。

それから彼女を見送り部屋に戻った。
三連休の初日だった。
酒に逃げたけどまったく酔わないし、いろんな人に電話をした。
友達や先輩や両親に泣きついた。

その後彼女に電話をした。来週土曜日に会う約束だったけれど、
顔が見たくて声が聞きたかったから。明日会いたいというと、
駄目だよ、来週でしょ、と平らな声が帰ってくる。
でも会いたいんだけど、君ん家行くよ、というと駄目だよ、わたしが行くから、話の続きでしょ、と返答がくる。
昨日は君がきたから、今度は俺が行く、それがフェアでしょ、と変な理屈をこねて、彼女がうんわかった、と言って、翌日午後に彼女の部屋に行った。

とにかくなんとかしたかった。
最初のログで書いたような自分の非を謝って、もう元に戻ろうとは言わない、新しくつき合ってほしい、もう一度チャンスを欲しいと懇願した。
でもやはり無理という返答だった。
一度別れて、友達に戻って、そこからじゃないと無理だと。
でも、そうしたところで君がもう一度俺を受け入れるとは限らないだろう、と言うと、うん。と返事がきた。

異性として見られない、でも居心地がよく慣れも安心感もある俺は君にとって何なんだろうと聞くと、すごく仲の良い女友達だ、と言われた。
仲の良い友達でいたいと。

それで何だか得心してしまい、
少なくともまだ一緒にお茶したり、食事したり買い物したりはできるんだよね、というと、それは勿論、友達だから、前みたいに泊まったり時間全部を預けたり毎週会ったりはなくなるけどと返事がきた。

だから、他に好きな人ができたら気兼ねしないでその人とつきあって欲しいと言われた。君も同じで、他に誰かいるならはっきりそう伝えてくれ、その方が辛いけど分かりやすい、という応答をした。

誰かいるのかい、と聞くとううんいない。と言う。
つき合ったころから、他に好きな人ができたら互いに伝えてすっきり別れようという話はいつもしていた。どこまで信じていいか分からないけど、彼女の返答は多分本当だと思う。

友達としてよろしく、と言い合って、彼女が手を差し出してきて、部屋の合い鍵を返した。
その後テレビを見て、笑い会って、近所の店で夕食を食べ、コーヒーを飲んで部屋に戻った。

世の中生きていく中でこんなに辛いことがあるなんて思わなかった。
眠ろうとするとシーツが汗でびっしょりになって断続的に目が覚める。
朝起きると、彼女がいないという事実を認識して(同棲していたわけではないけど)立てない。でも仕事に行く。
部屋に戻った後で彼女に電話した、
これから友達としてよろしく。ただ気軽に聞いて欲しいけど、俺はもう一度君とつき合いたい、始めたいと思ってるし、そのためにもう一度異性として好きになってもらえるような人間になるよう努力する。それでいずれまたアプローチすると思う。それまで友達としてよろしく。ただ、その途中で友達という関係に甘えたり、友達関係以上のことを求めそうになったらはっきり言って欲しいと。彼女はうん分かったと答えた。

仕事に行くけど、頭と心がばらばらになっている。
今は仕事に行く前に市販の向精神薬と寝る前に睡眠導入材みたいなのを飲んでいる。セントジョンズワート?

インターネットで失恋にまつわるサイトや掲示板を読んでいる。
人の言葉は助けられる。同じ思いをした人間がいるんだなと思うと、助けられる。でも最終的には、友達と電話して泣きついて、電話を切った後残るのが自分一人なように、最終的には、自分一人で、解決しなければいけない。

辛い。

はじめて



八年間つきあってきた彼女に別れようと言われた。
去年の年末にそう言われる前、昨年一年、お互いお言動、時間の過ごし方、
セックス、いろんなことでずれが見られるようになっていた。
自分は今28歳、彼女は29歳。
学生時代からつきあいはじめ、居るのが当然のような関係だった。
でもそれはおそらく自分の思いこみで、
その「居て当然」の感覚がどれだけ傲慢で、相手を他人として認識しようとしていない行為だったかを、相手から別れを告げられて初めて知った。
もう遅いけれど。

彼女はもともとアレルギー持ちで、肌も弱く、多分一般的な健康体というには支障があった。でも普通に街を歩いて互いの部屋にいって眠って、食事をするとか、そういったつきあいに弊害があるわけじゃなかった。
その時間は本当に楽しくて、その楽しさ、心地よさがずっと続くもんだと思ってた。

就職し、週末はいつも一緒にいた。
でも一昨年くらいから、彼女が仕事で部署が変わり、仕事が忙しくなったと言ってきたときからつき合い方が段々変わった。
向こうは自分の時間が欲しい、休日は部屋でゆっくり寝たい、掃除や洗濯をしたいというのに対し、自分はせっかくの休日なんだからどこかへ行こう、まず俺の部屋に来てよ、と駄々をこねた。それが当然であるように。

彼女はよくぼんやりする人で、自分は逆にせっかちな人間だ。
テレビをつけて笑ってぼんやり時間を過ごす彼女と、ご飯を作りながら洗濯をする自分とでは、時間の使い方に対する概念が違っていた。
何でもっと上手に時間を使えないのか、俺よりも平日は早く帰れるのだから、その時間で炊事洗濯をして、週末は二人でいようとなんで思えないのかと責めた。

そうやって俺は彼女の変化を察知できず、他に好きな人ができたんじゃないのかと難詰したり、もともと性欲が薄く、体力の低下でさらにそれが深まった彼女に対して、何で前みたいにセックスできないのかと責めたりした。

そうやって自分のわがままを、彼女の体力の低下のせいにした。
それで電話やメールも、今思うと段々ぎこちなくなった。
年末ある時、土曜日なのに連絡をしてこない彼女にひどく電話口で怒った。
もともと自分は短期で、彼女は怒っている人間が無条件で怖いと言っていた。
けれど電話口で怒鳴り、罵声を吐いて、夜彼女の部屋に行った。
感情にまかせて、「俺達は好き同士だけれど、もともと相性があってなかったんだ、相性が悪いし駄目だったんだ」と言ってしまった。ブラフのように、
彼女を元に戻す(それがどれだけ傲慢なことかも知らず)ために心にもないことを言った。彼女は泣き、それから日にちが経ち、彼女が自分の部屋に来た。

セックスをして、彼女が頭をすりよせてきて、言わなくちゃいけないことがあると言った。この間、あなたに言われたことをずっと考えていた。
あなたは、あなたが私を好きなほど私はあなたが好きじゃないんじゃないかと言った、それはよく考えると、そうかもしれない。
あなたといると居心地もいいし、安心感も慣れもある。けれど、それは恋愛感情ではないんじゃないかと。距離を置きたい、一ヶ月会わないでいて欲しいと、彼女は言った。

自分は段々静かにパニックになった。
まさかこんなことになるなんて、そう思うだけでロクにしゃべれなかった。
結局、一ヶ月なんて無理だ、せめて十日にしよう、別れるなんて絶対あり得ないと伝えた。

年末年始を過ぎて十日目に彼女と自宅近くの喫茶店で待ち合わせた。
顔つきが違っていて、部屋に行くときも隣じゃなく、斜め後ろを歩いていた。
部屋に入って、この間の話の続きをしよう、として話が始まった。
十日間考えて、わたしがあなたに抱いている感情は、居心地の良さや安心感で、それは好きであると言える。けれど、あなたに異性としての恋愛感情がもうないことに気づいてしまった。そう考えると、去年からぎくしゃくしたこともつじつまがあう。わたしはあなたと恋愛していると思っていた。でも恋愛感情がない以上、セックスもできない、恋人でもいられない、別れよう。そう言った。

何を言っているのか全然理解できなくて、パニックというか、表面上は「ふーん、困ったな」とか「うーん、」とか取り繕うだけで、心中がとっくに発狂してたように思う。
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